調べものの〝地図〟を頭の中に持つとは…
昨今は、ウェブで多様な情報に簡単にアクセスできるようになりましたが、その弊害として「気づくと長時間検索していて時間が過ぎている」「情報が膨大過ぎてまとめきれない」といった、非効率が生じてます。会社勤めの人は「調べものをして、資料にまとめる」という作業が日常的にあり、ムダを減らして爆発的に効率を上げる方法が眠っています。
「プロは、調べものの〝地図〟を頭の中に持っている」と、某戦略系コンサルティング会社は言い切ります。資料作成を指示されたら「まずやるべきことはグーグル検索ではない。〝地図〟の中の目的地を明らかにして、そこにたどり着く最短ルートをプランニングすること」が重要であると力説します。
◇依頼者の意図や目的は…
仮に最初に上司がなぜそれを指示したのかを把握したいところです。それは「どこまで深い情報を必要とするのか」や「デッドラインはいつなのか」等の内容をはヒアリングする事が重要です。それらを明確にせずに作業に取りかかるのは危険であり、後でやり直しを命じられる、調査に時間をかけ過ぎてしまうというリスクが高いからです。
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◇資料作成のスケジュールは…
締め切りや目的に沿って、スケジュールを組み、一般的に5日間猶予がある場合は4日目まで情報収集を続け、最終日にまとめようとする人が多い傾向です。しかし某戦略系コンサルティング会社の担当は「プランニング」に半日かけてから着手で、短時間で情報収集を一旦終えて、仮まとめを作る方法を取る事が多いそうです。不足情報だけを追加で探せるので、全体の調査時間を「引き算」することにもつながります。
業界や競合の「市場」や「会社」をどう調べるか?それはリサーチの〝型〟を覚えておく必要があります。リサーチの〝型〟とは「フレームワーク」を活用する事であり、フレームワークとは企画立案や問題解決を進めるための思考の枠組みです。
例えば「市場調査」をする場合は、「MCC」というフレームワークを使うといい。これは市場を理解するためには、「市場動向(Market)」「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」の3つの要素が不可欠だという概念を表しています。個人の興味や情報の多寡にかかわらず、3つの情報が満遍なくそろうのが望ましいところです。注意点として無意識で調べると、顧客という視点が忘れられる場合が多いそうなので、ユーザーの声も加味しながら作成すると良いでしょう。
次に会社について調べるときは、「ヒト・モノ・カネ」の3要素をカバーする必要があり、社会現象の分析やマクロ視点での予測には政治、経済、社会、技術を意味する「PEST」がよいでしょう。他にも内的要因の強み・弱みと外的要因の機会・脅威を分析して戦略立案に使う「SWOT」や、商品分析に有効な「4P」などもあります。
◇SWOTとは…
組織を、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの軸から評価する手法のこと。企業戦略の立案時などに用いられる。
◇3C/4Cとは…
企業活動を分析する3つの視点、顧客分析(Customer)、競合分析(Competitor)、自社分析(Company)のこと。最近でChannel(チャネル)やCo-operator(協力者)を加えて4Cとする場合が増えてきている。
◇4Pとは…
マーケティングの主要な要素であるProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)のことを言います。
◇マーケティング職向け
新商品開発を考えるに当たり、ある市場に新規参入すべきかどうかを検討する。そういった市場の特徴をざっくり把握する場合活用するのが「MCC」で、市場動向や競合だけでなく、どういった顧客が買っているのかという視点があると、よりリアルに把握できるかと思います。
◇営業職向け
営業の人なら「来週初めて行く会社について調べたい」ということが頻繁にあります。そのときは「ヒト・モノ・カネ」という枠組みが役立ちます。概してその会社が扱う商品群や業績の数字については確認しても、どんな人が経営しているかなど「ヒト」の視点を忘れがちなので注意が必要です。
◇経営企画職向け
予想がつかない未来を予測して経営ビジョンを固めるためのリサーチはどうするか。「未来はあくまでも現在の続きにあることが基本」とコンサルティング会社担当は語っており、現状分析のためにMCCを用いてもいいが、マクロ視点で考える場合は、政治、経済、社会、技術を示す「PEST」が役に立つそうです。
資料をまとめる際のポイントは…
次に〝型〟を決めたら、調べものをする前の段階で項目だけを並べた「ブランクチャート」を作ると良いそうです。これに沿ってリサーチをすれば関係ない事柄の調査や重複を避けることができます。枠組みに沿って、調べる最大のメリットは「モレなく、ダブりなく」できる点であり、この考え方をコンサル業界では「MECE(ミーシー)」と呼び、さまざまな思考や戦略の基本とします。リサーチ段階でももちろん、資料作成時にもこの考え方が活躍します。
◇資料をまとめる際のポイントは…
まとめる際には、最初に作ったブランクチャートに沿って書いていくと、迷いなく進められ、長すぎる文章はそれだけでわかりにくさの原因になります。1項目を100字程度に収める、表はなるべくグラフにする、結論を3つにまとめるなど、入れる要素は厳選すると、見やすさが増して効果が高まります。
さらに同じことを書いていないかフレームワークに沿って抜け落ちている事項はないかなどをチェックし、「捨てるには惜しいエピソードやデータは、参考として別紙で付けておくといい。また、私見や備考を付箋で伝えるのも喜ばれる」とコンサルティング会社担当は語ります。
フレームワークを駆使して、クライアントの問題解決を加速させる戦略系コンサルタント。そのメソッドを使うメリットは、単に時間を短縮できるだけにとどまらず、新規市場を開拓したい、コンペに勝ちたい等の思いを実現するための情報を過不足なく集め、そぎ落として資料にまとめる。この習慣を持てば、重大な場面でのビジネス決断力を高める事が出来るのではないでしょうか。
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