AbemaTVとは…
サイバーエージェントとテレビ朝日がタッグを組み、16年4月に開局したインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」です。今後テレビや他の動画配信サービスとどう差別化していくのかが注目です。
AbemaTVはニュース、アニメ、バラエティなどを約30チャンネルで24時間無料放送し、スマホやPCで見られる。番組表に沿って配信され、有料プラン(月額税込み960円)なら放送後にもオンデマンド視聴可能。番組制作ではテレビ朝日のリソースを活用して行くことになります。4月の開局から5カ月で、アプリのダウンロード数は800万件超と想定以上に好調です。
番組はテレビと全く同じように、番組表の時間通りに配信。オンタイム視聴が前提で、月額960円(税込み)の「プレミアムプラン」に入れば放送後の番組のオンデマンド視聴も可能だ。利便性が劣るように見えるかもしれないが、見たいコンテンツを探して選ぶ行為にはストレスがあるというのがのAbemaTV側担当の仮説で、テレビのように受け身で見られるサービスを目指しているそうです。メディアとの接点がもっぱらスマホになった人に、もう一度「テレビっぽいもの」を見てもらうのがコンセプトですが、収益化は正直、まだ遠い状況です。
AbemaTVの発案者であるサイバーエージェントの藤田晋社長は「ネット初のマスメディアをつくる」と語っており、そう呼べる規模になれば広告で稼ぐことも可能であるそうです。将来的に、広告収入7割、課金収入3割程度を想定しているとのことですが、緻密な計算があるわけではないようです。メディアとして大きくしていく道は、試行錯誤のなかで少しずつ見え始めている。
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番組の視聴層や人気番組は…
番組作りではまず、スマホ向けの放送でも、映像が美しくテレビでも流せる水準であることを必須としています。実は企画当初は、ユーチューブにあるような映像やマイナーなスポーツ大会など、発掘要素の強い番組を中心にする予定だったのですが、実際にスマホで見るとネットっぽさが抜けず、マスメディアになれるイメージが持てなかったそうなので、開局の半年前に方針を変更したそうです。麻雀番組であっても、麻雀の動画としては極めてレベルの高い編集をしており、オリジナルのバラエティ番組では、小さな画面でテロップを多用しすぎるとうるさく見えるため、美しさを優先している。
また「予定調和をなくす」ことも重視しており、特にバラエティでは先の展開が読める番組では見続けてもらえないため、生配信を中心にしライブに強い出演者を起用することが多いそうです。
◇アニメやニュースに手応え
目指しているのは「帰宅したらまずAbemaTVを開く」など、視聴を習慣化することであり、人気アーティストの特番などで瞬間風速的に視聴者を集めても、すぐにいなくなっては無意味であり、マスメディアになるためには、毎日や週1回以上など、継続的に視聴してくれるユーザーを積み上げていく必要があると担当は語っています。
現状、最も視聴者を定着させられているのはアニメで、翌日も見続けてくれる人の比率が約60%もおり、ニュースもそれに次ぎ高いそうです。麻雀も他にあまりないコンテンツ故か定着率が高く、視聴者数でもトップクラスの番組が多いそうです。700万ダウンロードに達した8月の時点で、AbemaTVを週に1回以上見てくれた人は300万人以上で、順調に積み上がっている手応えがあるようです。
◇視聴ユーザー層は…
もともと想定していたユーザーは35歳程度までの若年層が中心で、男女比は半々だったが、開局当初は30歳超の男性が大半を占め、非常に偏っていたそうです。その後、海外ドラマチャンネルを開設するなどの対応により35歳以下が70%程度を占めるまでになったが、まだ男性が70%ほどを占めている状況だそうです。
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◇データで真のニーズを発掘
誰が実際に何を見ているのか、データを即、番組編成の見直しに生かせるのはネット放送の強みであり、例えば海外ドラマでは、「ゴシップガール」や「HEROS」などの超人気作よりも、コメディの「フルハウス」の視聴数が多かったためゴールデンタイムに移す工夫をしたそうです。放送途中から見始めても支障がなく、受け身視聴に向く点が重要なようで、若年層が少ないとされる平日昼間には、主婦層を狙った韓流ドラマを放送したところ、実際には10代の視聴者が多いという意外な数字も出ています。アニメでは当初、週末に全話を連続で放送して話題を集めていたが、実際には5話目くらいで脱落するユーザーが多いことがわかり、そこで現在は1クールを前後編に分けて編成しており、今後も番組編成は、短期間で大きく変わっていくそうです。視聴を習慣化できずに去る人を呼び戻すのは最大の課題ですが、スマホのプッシュ通知は重要だが、送りすぎれば視聴者は「ウザい」と感じるのも実情です。頻度は多くても1日3回までで、視聴履歴に連動したリコメンドを送るなど、通知機能は緻密に設計しており、また災害情報や緊急記者会見の中継など、「今この瞬間に見るべき番組」は通知でも最優先にしてあるとの事です。
外出先でもスマホですぐに見られることは強みであり、AbemaTVには視聴しながらコメントを書き込む機能があるが、アニメを中心にコメント欄が非常に盛り上がり、そんな番組ほど視聴数も伸びる傾向があり、交流しながら視聴したいニーズは確実にあり、番組に一度「参加」したユーザーは定着しやすいという印象もあるようです。そこで10月には番組を見ながら視聴者が投票できる機能を追加していくそうでコメントよりも手軽に参加してくれることを期待しているそうです。
◇視聴数が多い番組は…
AbemaTVでは特にアニメの人気が高く、麻雀と釣りは専門チャンネルで放送されており、ニッチなジャンルの番組が視聴者から支持されています。開局後に女性や若年層の開拓を狙って海外ドラマチャンネルを新設し、米国のコメディドラマ「フルハウス」が人気で、アダルトな要素を含んだバラエティ「妄想マンデー」も支持を集めています。テレビではあまり見られなかったり、いつでもどこからでも見始められる内容が受けます。さらには記者会見の「全編ノーカット版」など、テレビでは捨てていた映像も重要コンテンツであり、中でも「シマウマが逃げた」地域ニュースの映像を延々と流したら思わぬ関心を集めたという意外な発見もあったようです。